自宅をパワースポットにする

一番身近な場所を、最高の空間に変える。
堤さんならではの心優しいマジックです。

堤 信子
Nobuko Tsutsumi

フリーアナウンサー、昭和女子大学、法政大学その他兼任講師。エッセイスト。福岡県生まれ。TV、ラジオ、講演のほか、WEBや誌面での連載など幅広く活躍中。

やっぱり片付けは苦手

一年の折り返しを迎える5月の終わり、ふと年始に立てた抱負を思い返してみました。その中の一つに、「自宅をいつも整理整頓された状態に保つ」というものがあったのです。

一月、二月の私は、なかなか頑張っていました。こまめに片付け、物の定位置を意識し、気持ち良く過ごせていたはずなのに——気がつけば、少しずつ物が増え、忙しさに紛れて手をつけない日が続き、半年経った今、部屋を見渡して思うのです。「ああ、やっぱり片付けは苦手、今年も同じことを繰り返しているな」と。

そんな話を友人にこぼしたとき、彼女は少し意外なことを言いました。

ただいま。ありがとう

「疲れているのに無理して片付けるよりも、まずはお家に感謝してみるといいかもよ」。

お家に感謝する——その言葉は、どこか新鮮に響きました。

確かに、どんな一日であっても、帰る場所があるということ。それは当たり前のようでいて、実はとてもありがたいことなのかもしれません。

どんなに散らかっていても、文句一つ言わず私を迎え入れてくれる安心な場所、それが自宅なのだと。

それからというもの、私は帰宅したときに、心の中でこうつぶやくようにしてみました。

「ただいま。今日もここに帰ってこられてよかった。ありがとう」と。

自然と湧き出る想い

部屋が散らかっているかどうかは、ひとまず横に置いておく。まずは感謝を向ける。それだけのことなのですが、不思議と空間の空気がやわらかく、あたたかくなるように感じるのです。

部屋にも、きっと目に見えない“気配”や“周波数”のようなものがあるのでしょう。そこにどんな言葉をかけるかで、自分自身の感じ方も変わってくる。

「また散らかっていて嫌だな」とため息をつく代わりに、「今日も守ってくれてありがとう」と伝える。その違いは思いのほか大きいのです。

面白いことに、そうして部屋に優しく接していると、自然と「少し整えようかな」という気持ちが湧いてきます。無理にやる気を引き出すのではなく、内側からすっと動き出すような感覚です。

もしかすると、整理整頓の順番というのは、まず整えることではなく、まず感謝することなのかもしれません。

心が整う場所

そう考えるようになってから、今年の後半は少しうまくいきそうな気がしています。完璧でなくてもいい。けれど、居心地の良い空間に少しずつ近づいていく——そんな日々を重ねていけたらと思うのです。

家の中に優しい空気が満ちてくると、その場所は自然と心を整えてくれるようになります。外に何かを求めに行かなくても、日常の中に小さな“整う場所”がある。

自宅がパワースポットになる、というのは、きっとそういうことなのだと思います。

堤信子のありがとう上手の習慣
〜代官山のキッチンから〜

心地よいコーヒータイムにおすすめのコーヒーやおやつの紹介、エッセイ朗読をお届けします。

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